三味線方 杵屋 邦寿

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Works-邦寿による作品解説-

「一人勧進帳」 弁慶  七代目市川團十郎がこの作品を構想、曲を四代目杵屋六三郎師に委ね、九代目市川團十郎が完成させ、今に伝わる、というこの曲の成り立ちから、四代目六三郎師の作品、時代、逸話も話します。
 聴く人を劇場に誘い、勧進帳の舞台が始まる流れから、台詞や歌詞の紹介、説明をします。言葉の意味・歌詞の意味が理解できれば、その音楽(長唄)や弁慶・富樫の言葉のやり取りを本当に楽しんで頂けます。 誰もが大好きな昔の忠義・人の思いを察する優しさ・勇気・人情、そんな事柄がふんだんに入っている勧進帳。名作・名曲の舞台を想像しながら(頑張って弾き唄いをする邦寿の姿を通して)聴き終わると必ず本当のお芝居が観たくなります。
長唄「綱館の段」 綱館  作られた年代、三味線と西洋楽器など外国との比較、作曲者のことなどを話します。
 足柄山の金太郎さんがおとなになり、そのお友達がこの作品の主役「渡辺の源治綱」という人で、その”綱”の家で起きた物語なので「綱館」といいます。お定まりの流れで始まり、歌詞の言葉の意味を説明したり(たとえば「唐櫃」=足の付いている箱、「ためつしがめつしけじけと」=目を細めたりしてあっちからこっちから見る様なしぐさ、など)場所の説明、服装、動きなども語ります。内容は、綱に一度破れ片腕を取られた鬼が伯母さんに変装し、綱を騙して近づき後に正体を現し、腕を取り返して去ってゆくというもの。鬼の姿など小学生にもリアルに想像して聴いて楽しんで頂けます。
長唄「靭猿」 靭猿  長唄「靭猿」の物語の舞台となる時代、作曲者にまつわるエピソードなどを話します。
 大切なのは当時の身分制度の厳しさや、流行について知ってもらうこと。
歌詞は殆どが会話形式になっておりますので分かりやすいです。
動物と人間との合、二代目杵屋勝三郎師の名曲のひとつであり、頑張って弾き唄いをする邦寿もたのしんで頂けます。
佐倉義民伝
「甚兵衛渡しの段」

作詞/タカクラテル
作曲/平井澄子
甚兵衛渡し  文楽や歌舞伎の演目にもある作品です。領主の血も涙もない非道な年貢の取り立てに、死と隣り合わせで苦しむ農民たち。農民たちのために命を捨てて将軍に直訴する名主・木内宗五郎(本名 木内惣五郎)。そして沼の渡し守・甚兵衛という老人。甚兵衛は宗五郎の命をかけた決断に心動かされ、宗五郎をこの世の別れに妻子と逢わせるために自分も命を捨てる覚悟で、夜間の渡し舟の使用を禁じて役人がかけた鎖を断ち切ります。
 この作品の中心は寒い寒い雪の夜、狭い船小屋での二人の会話です。宗五郎・甚兵衛・目明かしのメダカの八・役人、それらを語る太夫・三味線弾きを一人で勤めます。二人の会話にどれだけのリアルさを、唄の歌詞にどれだけの風景を描けるかが作品の命です。現代に於いても苦しむ庶民は沢山いる、だkらこそ必要な物語だと思っています。
「さんしょう太夫」
鳥追い唄の段

作詞/タカクラテル
作曲/平井澄子
 森鴎外のさんしょう太夫は皆様もご存知かと思いますが、この作品は内容が違います。いわきの国から夫・父を助けるために全てを売り払い、九州を目指して歩く母とその子ども二人。一行は直江津で山岡という船乗りに騙され、母と子は別れ別れに奴隷として売られてしまいます。十年の月日が流れ、奴隷にされた男の子厨子王は単語の国のさんしょう太夫のもとを抜け出し、母と敵・山岡を捜しに佐渡ヶ島にやってきます。鍛冶職の厨子王はついに敵を討ち、死んでしまったとおもっていた母に巡り合うことができる。強い者が勝つのではなく、弱い者が命をかけ力を合わせて自由を勝ち取る物語です。
 山岡との会話の緊迫感、盲目の母に信じてもらえない厨子王の心中、そして母の呟くようなひとつの唄が絆を引き寄せる…。これらの物語の太夫・三味線弾きを一人で勤めます。平井澄子先生の作品に出会えたことを心より感謝致しております。
長唄「黒塚」
作詞/木村富子
作曲/四世杵屋佐吉
昭和十四年
市川猿之助初演
 数ある長唄の曲の中で、邦寿が一番好きな作品であります。それは若い頃に佐吉さんの流派(佐門会)で手ほどきを受けプロとしての道を学んだ事、この作品を耳にし目にする事も多く憧れと愛着が生まれた事、そして何と言っても初めて新橋演舞場で「黒塚」を観た時の感動が心にあります。その感動は四世佐吉師の作曲にあります。ほぼ現代用語で書かれている歌詞に、その場面に正に絶妙な旋律が付けられています。鳴物四拍子(大鼓・小鼓・太鼓・笛)・琴・尺八が這入る演奏はそれは豪華で感動します。
 しかし私はこの作品の土台となっている一音一音を聴いて頂きたいのです。<一つ家><月の 野><黒塚>などの場面の説明や流れ、今は使われない単語の意味などを語り、演奏中お客様に場面や様子を思い浮かべて聴いて頂けるようにしております。そしてフル編成での演奏による歌舞伎や演奏会での「黒塚」をたもっと楽しんで頂きたいのです。
唐人お吉
作詞/タカクラテル
作曲/平井澄子
 お国のためだったのか。
男の栄誉のためだったのか。
お吉は疑わずにずっと信じて生贄になった。
現在の誰しもが知らずにお吉となる不安を、
作者達は語っているのではないか?と、
重く思います。